語学、翻訳、海外生活

語学、翻訳、海外生活に関する記事が多いですけれども、そのほかの話題もあります。今日明日の仕事や生活に役立つかどうかは分かりませんが、「面白い」と思って下されば、書き手冥利に尽きます。

辞書三昧

中学高校時代を通じて、M先生に英語のご指導を受けた。2級上の先輩に、「M先生はとても良い先生だ。M先生の言うことは聞き流さずに全部ノートをとった方がいい」と教えられ、そのとおり実行した。おかげでとても勉強になった。「良い辞書を選んで、まめに引くことが、語学上達の秘訣だ。辞書を引く労を惜しむようでは、何事も成就しない。単語には複数の語義があるのは普通だから、知らない単語はもちろん、知っていると思っている単語こそ何度も辞書で引け」というM先生の言葉は忘れられない。

 

M先生に、初版が発売されたばかりの研究社新英和中辞典(以下、中辞典)を勧められた。ご存じの方も多いと思うが、英語の動詞には、動詞型(Verb Pattern)という語法のルールがあり、動詞によってとれる動詞型が決まっている。たとえば、describe(記述する)という動詞は、describe that…という構文をとらない。英米人は、それぞれの動詞の取りうる動詞型が頭の中に入っているが、日本人はまめに辞書を引かざるを得ない。中辞典には、動詞すべてに対してその動詞のとれる動詞型と用例が明記してあって、英語を書くのに不可欠だ。現在出回っている学習英和辞典の多くには、それぞれの動詞の取りうる動詞型が明記されているが、この点、中辞典は当時の学習英和辞典としては先駆的な辞典であった。また、名詞型や形容詞型の記述もある。あらためてM先生の慧眼とご指導に感謝する。

 

一方で、英文を読むときや、英語を日本語に翻訳するときは、収録語数や訳語が豊富な辞書が重宝する。しかしながら、用例が豊富であるのと、収録語数が豊富なのとは、ページ数の制限で両立が難しい。したがって、英和辞典としては、用例が豊富な辞書と、収録語数が豊富な辞書の2種類が最低必要になる。

 

私はOxford Advanced Learner’s Dictionary (OALD)を愛用している。英和辞典でピッタリあてはまる訳語が見つけられない場合には、OALDで単語の意味を理解し、文脈に沿った訳語を自分で考える。これで助かったことは何度もある。用例も豊富だし、もちろん文型の解説もしっかりしている。Nativeの同僚曰く、”The Oxford dictionary is the golden standard.”(オックスフォードの辞書は、最高です)

 

そういうわけで多数の辞書のお世話になっている。それぞれに特徴があり、比べて読むのは楽しい。まさに辞書三昧だ。しかし老眼のため細かい字を読むのは疲れる。その点、電子辞書やパソコンにインストールできる辞書はありがたい。ネットの辞書も便利だが、ネットの辞書だけに頼ると訳語の範囲が限られてくる。最後に、「辞書は値段が少々張るかもしれないが、辞書編纂の労苦や、辞書から学べる内容を考えれば、安い買い物だ。辞書に支払う位のお金を惜しんではいけない。」というM先生の言葉を紹介して筆を擱く。