核融合への挑戦(2)
核融合は、1960年代から日本、欧、米、ロシアで研究開発が進められてきた。日本では、量子科学技術研究開発機構のJT-60U装置(茨城県那珂市)において、1990年代に5億度という、世界最高で、太陽中心よりもずっと高温を実現した。米国と欧州では、核反応を起こし、外部から加えるエネルギーにほぼ等しいエネルギーを核融合反応で作り出すことに成功した。日本でも同様のプラズマ状態を達成している。しかしながら、これらの状態は、現有の実験装置では1秒程度の短時間に限られている。核融合炉を成立させるためには、外部から加えるエネルギーの10倍以上のエネルギーを核融合反応で作り出し、その状態を定常に保持する必要がある。
現在、日欧米露中韓印の7極の国際協力で南仏に建設が進められているITER[1]は、外部から加えるエネルギーの10倍以上のエネルギーを核融合反応で作り出し、その状態を数分間以上保持する実験炉である。本格的な稼働は2035年。しかし、実験炉ITERでは、発電の試験は行うものの、まだ本格的な発電は行わない。本格的な発電は次の段階のデモ炉(実証炉)で行う。これは2050年ごろと考えられている。デモ炉で安全性や信頼性が実証でき、経済性に見通しが得られれば、商用炉が実現する。
茨城県那珂市に日欧協力のもとで建設が最近完成したJT-60SA装置[2]では、ITERを支援し、補完する研究が進められる。ITERにさきがけて実験を行うことにより、ITERの目的達成を加速し、ITERやデモ炉の研究開発を主導できる日欧の人材が多数育つことが期待されている。
このように、核融合の研究開発は、極めて長丁場である。核融合炉が実現すれば、人類は、安全で、資源が豊富で偏在しない、信頼性の高いエネルギー源を確保することになる。
[1] https://www.fusion.qst.go.jp/ITER/