語学、翻訳、海外生活

語学、翻訳、海外生活に関する記事が多いですけれども、そのほかの話題もあります。今日明日の仕事や生活に役立つかどうかは分かりませんが、「面白い」と思って下されば、書き手冥利に尽きます。

人類はみな兄弟?!

今回は初等数学の話題。だれにも父親と母親が一人ずついる。したがって1世代前には2人の先祖がいる。父親と母親それぞれに父親と母親がいる。おじいさんとおばあさんは二人ずつ、つまり2世代前は、4人。ということは、1世代遡るたびに数が2倍に増える。そうすると、3世代前は8人、4世代前は16人、5世代前は32人。1世代は25年と仮定すると、これは、125年前、1900年ごろ。日清日露戦争の頃だ。ちょっと飛ばして、10世代前(250年前、1770年、江戸時代中期)のご先祖の数は1024人ということになる。

 

ここで一息。いまなお、「我が家の先祖は武家で。。。」というような自慢話をする人がたまにいる。しかし、江戸時代に、1000人ほどのご先祖がいらっしゃれば、なかには立派なお方もいたかもしれないが、いろんな人がいたかもしれない。そうすると先祖の自慢話をするのは、止めたほうが良いのではないか。

 

ふたたび計算にお付き合いください。20世代前(500年前、1520年、戦国時代)は約百万人、30世代前(750年前、1270年、鎌倉時代)は、約10億人となる。この頃の日本の人口は、数百万人であるから、明らかにどこかおかしい。共通の先祖をだぶって数えている、ということだ。現代人の任意の二人に、共通の祖先がいないとすると、この矛盾はさらに大きくなる。20世代以上前に遡れば、少なくとも、住民の間で交流のある小さな村、町、郡に限れば、そこら中親戚だらけということになる。

 

昔は、今のように交通機関は発達していないし、江戸時代でいうと、藩をまたがった交流は限られていたようだし、ましてや国境をまたがった交流はさらに限られていた。しかし、遺伝子解析の結果によると、我々ホモ・サピエンスは、約20万年前アフリカ南部ボツワナに住んでいた一人の女性が共通の祖先であるという。[1]いがみ合ったり、ひどい場合には殺しあったりする子孫を彼女が見たとして、どう思うだろう。人類はみな兄弟。

 

[1] 人類の故郷はアフリカ南部ボツワナの湿地帯…最新の研究で新説 (Nature 575 (2019) 185-189)