語学、翻訳、海外生活

語学、翻訳、海外生活に関する記事が多いですけれども、そのほかの話題もあります。今日明日の仕事や生活に役立つかどうかは分かりませんが、「面白い」と思って下されば、書き手冥利に尽きます。

核融合への挑戦(3)

すでに紹介したように、核融合は、将来の有望なエネルギーとして研究開発が鋭意進行中である。日本は、日欧米露中韓印の国際協力のもと南仏に建設中のITER計画に積極的に関与している。また、日欧協力の下でJT-60SA(茨城県那珂町、量子科学技術研究開発機構(以下「量研」)那珂研究所)実験装置が最近完成した。ITERを支援し補完する研究成果が期待されている。量研の六ケ所研究所では、核融合炉の設計、原型炉材料の開発、原型炉材料試験装置の開発が進められている。

 

ダイバータは、炉心プラズマから漏れ出てくる熱と粒子を受ける、核融合炉の「掃除機」のようなものである。JT-60SAなどの現在の実験装置、ITER、原型炉と段階が進むにつれてプラズマから出てくる熱量は格段に増加するので、ダイバータの熱が厳しくなる。量研六ケ所研究所では、大学とメーカーの協力のもとに「原型炉設計合同特別チーム」を結成し、2015年に報告書[1]をまとめた。そのなかで、ダイバータについては、「原型炉での技術的成立性を判断する上で、技術成熟度を現状から最も高める必要がある」と特記されている。

 

原型炉、ITERJT-60SAほかの実験装置は、外部から加えるドーナツ方向の磁場に加え、ドーナツ状のプラズマの中に流す電流による磁場でプラズマ閉じ込めの磁場を完成させるというトカマク型である。運転領域によっては、このプラズマが不安定になり、閉じ込め磁場が失われる、ディスラプションという現象が起こりうる。そうすると、プラズマ中に蓄えられたエネルギーの大部分が、ダイバータや壁を直撃し、ダイバータや壁の表面を覆っているタングステンなどの金属が溶融し損傷する恐れがある。このような場合でも安全性は確保されているが[2]、原型炉の設計は、ディスラプションは全く、ないし滅多に発生しないことを前提としている。JT-60SAとITERには、日欧と世界の英知が結集するので、原型炉建設までには、ディスラプション制御が確立することが期待される。

 

しかしながら、原型炉や商用炉において、たとえば万が一制御機器の不具合によってディスラプションが発生すると、点検や修理などで運転が停止する可能性がある。長期的には、ダイバータには、ディスラプションに耐える材料を採用することが望ましい。そこで、スズなどの液体金属をダイバータに採用することを提案した。九州大学や中部大学などで液体金属ダイバータの基礎実験と数値シミュレーションが進められている。

 

[1] 核融合原型炉開発のための技術基盤構築の中核的役割を担うチーム報告(2015)

[2] ITERの安全性と構造健全性の確保について(2002)

核融合への挑戦(2)

核融合は、1960年代から日本、欧、米、ロシアで研究開発が進められてきた。日本では、量子科学技術研究開発機構JT-60U装置(茨城県那珂市)において、1990年代に5億度という、世界最高で、太陽中心よりもずっと高温を実現した。米国と欧州では、核反応を起こし、外部から加えるエネルギーにほぼ等しいエネルギーを核融合反応で作り出すことに成功した。日本でも同様のプラズマ状態を達成している。しかしながら、これらの状態は、現有の実験装置では1秒程度の短時間に限られている。核融合炉を成立させるためには、外部から加えるエネルギーの10倍以上のエネルギーを核融合反応で作り出し、その状態を定常に保持する必要がある。

 

現在、日欧米露中韓印の7極の国際協力で南仏に建設が進められているITER[1]は、外部から加えるエネルギーの10倍以上のエネルギーを核融合反応で作り出し、その状態を数分間以上保持する実験炉である。本格的な稼働は2035年。しかし、実験炉ITERでは、発電の試験は行うものの、まだ本格的な発電は行わない。本格的な発電は次の段階のデモ炉(実証炉)で行う。これは2050年ごろと考えられている。デモ炉で安全性や信頼性が実証でき、経済性に見通しが得られれば、商用炉が実現する。

 

茨城県那珂市に日欧協力のもとで建設が最近完成したJT-60SA装置[2]では、ITERを支援し、補完する研究が進められる。ITERにさきがけて実験を行うことにより、ITERの目的達成を加速し、ITERやデモ炉の研究開発を主導できる日欧の人材が多数育つことが期待されている。

 

このように、核融合の研究開発は、極めて長丁場である。核融合炉が実現すれば、人類は、安全で、資源が豊富で偏在しない、信頼性の高いエネルギー源を確保することになる。

 

[1] https://www.fusion.qst.go.jp/ITER/

[2] 量子科学技術研究開発機構 先進プラズマ研究開発

[3] 核融合科学研究所 かくゆう合へのとびら かくゆう合のけんきゅう

[4] Wikipedia 核融合エネルギー

[5] G. マクラッケン他、核融合:宇宙のエネルギーを私たちの手に(Kindle版)

核融合への挑戦(1)

専門が核融合なので、核融合の簡単な解説を試みる。核融合は、太陽や星のエネルギー源だ。だから、核融合の研究開発は、「地上に太陽を作る」ことと言ってよい。

 

エネルギー源として望ましい特徴として、

  • 安全性(事故を起こさない、有害物を飛散させない、廃棄物が無害)
  • 資源が豊富で偏在しない
  • 信頼性(昼夜、天候にかかわらず安定)
  • 経済性(低料金)

がある。核融合は、このうち、安全性、資源の豊富さ、信頼性に関して優れた特性を有している、有望なエネルギー源だ。世界各地で研究開発が進められているが、まだ実現には至っていない。経済性に関しては、これからの課題である。

 

核融合は、太陽や星のエネルギーであることから明らかなように超高温が必要だ。核融合炉は、中心温度2億度を想定している。このような超高温では、どのような物質でも、固体、液体、気体(ガス)に続く、プラズマ状態になる。太陽も星もプラズマ状態だ。

 

プラズマ状態というのは、気体を構成している分子や原子が電離し、陽イオンと電子に分かれて運動している状態である。核融合エネルギーの出力を向上させるためには、高温だけでなく高密度のプラズマを閉じ込める必要がある。閉じ込めようとしても、いくらかは外に出ていき、損失する。損失する分を補うためにエネルギーを供給しなければいけない。核融合反応で生成するエネルギーと、供給するエネルギーの比を核融合利得と呼ぶが、装置を大きくするなどして閉じ込め効率を改善すると、核融合利得が大きくなる。

 

プラズマは、磁場に沿っては動きやすいが、磁場を横切っては動きにくい。この性質を使って、磁場でプラズマを閉じ込めることができる。超高温プラズマを閉じ込める方式には、慣性を使うレーザー核融合という方式もあるが、ここでは、磁場方式に絞って解説する。(つづく)

 

[1] 量子科学技術研究開発機構 先進プラズマ研究開発

[2] 核融合科学研究所 かくゆう合へのとびら かくゆう合のけんきゅう

[3] Wikipedia 核融合エネルギー

語源談義(雨傘)

雨の多い季節だ。外出するときには雨傘が欠かせない。雨傘は英語でumbrellaというのはご存じだろう。このumbrellaという単語の語源が気になった。ドイツ語では、Regenschirm(Regenは「雨」Schirmは「傘」)なので、ゲルマン系ではなさそうだ。だからラテン系かな、というあたりはついた。しかし、フランス語では、parapluie(paraは「防ぐもの、保護するもの」pluieは「雨」)というので、ちょっと違うが、フランス語で夫人の携帯用折り畳み式日傘、小型パラソルはombrelleで、だいぶumbrellaに近くなった。研究社英和大辞典でumbrellaの語源を調べてみたら、どうもイタリア語のombra(影)、ラテン語のumbra「影、日陰」が起源らしい。イタリア歌曲に、ヘンデル作曲のOmbra Mai Fuという曲がある。歌曲を習い始めの学生が必ず歌う曲だ。このombraは「木陰」。フランス語でもombreは「影、日陰」。そういえば、スペインやラテンアメリカのつばの広いフェルト帽をスペイン語でsombrero(ソンブレロ)という。この語源はsombra「影」。ちなみにparasolはフランス語ではビーチやカフェテラスに固定して使う大型のパラソルで、solはsoleil(太陽)からきている。日差しから肌を守るからparasol。ついでに落下傘は、chute(落下)から守るからparachute。

 

軍医でもあり、文豪でもあった森鴎外は、11歳で医学部に入学するまえに、オランダ語ばかりでなく、ラテン語ギリシャ語をすでに習得していた。医学生は、夥しい数の体の部位名や病名を覚えるのに苦労するのが普通だが、これらの用語はラテン語ギリシャ語起源のものが多いので、苦も無く覚えられた、ということが「ヰタ・セクスアリス」に書いてある。小生は、文豪の足元にも及ばない浅学であるが、先に紹介したM先生のご指導で、語源をもとに単語を覚えるようになった。M先生は仏文科ご出身で、ラテン語の素養もあったので、英語の授業中に、語源の蘊蓄を披露して下さることがしばしばあった。面白かったし、助かったことは何度もある。少しでも参考になれば幸いである。

The Monty Hall Problem (Answer and Explanation) (7/13投稿記事の英訳)

Answer: The odds of the first door the participant selected having a car behind it are 1/3. The odds of the door Monty did not open having a car behind it are 2/3. Therefore, choosing to pick the other door is a wise choice.


Explanation 1: The odds of the participant`s first choice, door A, having a car behind it are 1/3.  The odds of door A not having a car behind it are 2/3. In this case, the car is definitely behind either doors the participant did not select, B or C.  Monty will open a door which does not have a car behind it, therefore, the car is definitely behind the door Monty didn`t open. The odds of this are 2/3. Accordingly, it becomes a wise choice for the participant to change their choice of doors.

 

Explanation 2: The odds of the participant`s first choice, door A, having a car behind it are 1/3.  The odds of the car being behind door B, which the participant did not select at first, are 1/3.  In this case, Monty opens door C. If you pick door B, you will win the car. The odds of the car being behind door C, which the participant did not select at first, are 1/3. In this case, Monty opens door B. If you pick door C, you will win the car. Therefore, after Monty opens a door with a goat behind it, changing your choice of doors gives you a 2/3 chance of winning, and is the best decision.

 

In the event that you don`t agree with the explanation given above, please see [1]. 

 

[1] Wikipedia: Monty Hall problem

The Monty Hall Problem (7/12投稿記事の英訳)

This time, we have a simple quiz. This is a problem related to one of the games from an American game show hosted by Monty Hall.  The rules of the game are as follows.

  1. There are 3 doors. There is one participant.

 

  1. Randomly placed behind the doors, there is a goat, another goat, and the actual prize, a car.

  1. The participant picks one door (For now, let`s say they pick A).
  2. Monty will open one of the two remaining doors, B and C.
  3. The door Monty opens will have a goat behind it.
  4. Monty will ask if the participant wants to change which door they picked.


And that`s about the gist of it. Taking all that into consideration, if you were the participant, would you change which door you picked? We`ll tell you the correct answer, and explain why next time!

モンティ・ホールの問題(解答と解説)

解答:プレイヤーが最初に選んだドアに車が入っている確率は1/3。モンティが開けなかったドアに車が入っている確率は2/3。したがって、ドアの選択を変更したほうがお得。


解説1:プレイヤーが最初に選んだドアAに車が入っている確率は、1/3。プレイヤーが最初に選んだドアAに車が入っていない確率は、2/3。この場合、車は、プレイヤーが最初に選ばなかった2つのドアの一つBまたはCに必ず入っている。モンティは、車が入っていないほうのドアを開けるので、車は、モンティが開けなかったドアに必ず入っている。この確率は2/3。したがって、プレイヤーは、ドアの選択を変更したほうがお得ということになる。

解説2: プレイヤーが最初に選んだドアAに車が入っている確率:1/3

プレイヤーが最初に選ばなかったドアBに車が入っている確率:1/3。この場合、モンティは、ドアCを開ける。ドアBを選べば車が当たる。

プレイヤーが最初に選ばなかったドアCに車が入っている確率:1/3。この場合、モンティは、ドアBを開ける。ドアCを選べば車が当たる。

したがって、モンティがヤギの入ったドアを開けた後、最初選ばなかったドアに変更したほうが、当たる確率は2/3になりお得。

 

上の解説で納得がいかない場合は、[1]、[2]または[3]をご参照ください。

 

[1] Wikipedia 「モンティ・ホール問題」

[2] 【図解付き】モンティ・ホール問題をわかりやすく解説してみた

[3] モンティホール問題をわかりやすく解説!2分でスッキリ理解!