核融合への挑戦(1)
専門が核融合なので、核融合の簡単な解説を試みる。核融合は、太陽や星のエネルギー源だ。だから、核融合の研究開発は、「地上に太陽を作る」ことと言ってよい。
エネルギー源として望ましい特徴として、
- 安全性(事故を起こさない、有害物を飛散させない、廃棄物が無害)
- 資源が豊富で偏在しない
- 信頼性(昼夜、天候にかかわらず安定)
- 経済性(低料金)
がある。核融合は、このうち、安全性、資源の豊富さ、信頼性に関して優れた特性を有している、有望なエネルギー源だ。世界各地で研究開発が進められているが、まだ実現には至っていない。経済性に関しては、これからの課題である。
核融合は、太陽や星のエネルギーであることから明らかなように超高温が必要だ。核融合炉は、中心温度2億度を想定している。このような超高温では、どのような物質でも、固体、液体、気体(ガス)に続く、プラズマ状態になる。太陽も星もプラズマ状態だ。
プラズマ状態というのは、気体を構成している分子や原子が電離し、陽イオンと電子に分かれて運動している状態である。核融合エネルギーの出力を向上させるためには、高温だけでなく高密度のプラズマを閉じ込める必要がある。閉じ込めようとしても、いくらかは外に出ていき、損失する。損失する分を補うためにエネルギーを供給しなければいけない。核融合反応で生成するエネルギーと、供給するエネルギーの比を核融合利得と呼ぶが、装置を大きくするなどして閉じ込め効率を改善すると、核融合利得が大きくなる。
プラズマは、磁場に沿っては動きやすいが、磁場を横切っては動きにくい。この性質を使って、磁場でプラズマを閉じ込めることができる。超高温プラズマを閉じ込める方式には、慣性を使うレーザー核融合という方式もあるが、ここでは、磁場方式に絞って解説する。(つづく)