語学、翻訳、海外生活

語学、翻訳、海外生活に関する記事が多いですけれども、そのほかの話題もあります。今日明日の仕事や生活に役立つかどうかは分かりませんが、「面白い」と思って下されば、書き手冥利に尽きます。

語源談義(雨傘)

雨の多い季節だ。外出するときには雨傘が欠かせない。雨傘は英語でumbrellaというのはご存じだろう。このumbrellaという単語の語源が気になった。ドイツ語では、Regenschirm(Regenは「雨」Schirmは「傘」)なので、ゲルマン系ではなさそうだ。だからラテン系かな、というあたりはついた。しかし、フランス語では、parapluie(paraは「防ぐもの、保護するもの」pluieは「雨」)というので、ちょっと違うが、フランス語で夫人の携帯用折り畳み式日傘、小型パラソルはombrelleで、だいぶumbrellaに近くなった。研究社英和大辞典でumbrellaの語源を調べてみたら、どうもイタリア語のombra(影)、ラテン語のumbra「影、日陰」が起源らしい。イタリア歌曲に、ヘンデル作曲のOmbra Mai Fuという曲がある。歌曲を習い始めの学生が必ず歌う曲だ。このombraは「木陰」。フランス語でもombreは「影、日陰」。そういえば、スペインやラテンアメリカのつばの広いフェルト帽をスペイン語でsombrero(ソンブレロ)という。この語源はsombra「影」。ちなみにparasolはフランス語ではビーチやカフェテラスに固定して使う大型のパラソルで、solはsoleil(太陽)からきている。日差しから肌を守るからparasol。ついでに落下傘は、chute(落下)から守るからparachute。

 

軍医でもあり、文豪でもあった森鴎外は、11歳で医学部に入学するまえに、オランダ語ばかりでなく、ラテン語ギリシャ語をすでに習得していた。医学生は、夥しい数の体の部位名や病名を覚えるのに苦労するのが普通だが、これらの用語はラテン語ギリシャ語起源のものが多いので、苦も無く覚えられた、ということが「ヰタ・セクスアリス」に書いてある。小生は、文豪の足元にも及ばない浅学であるが、先に紹介したM先生のご指導で、語源をもとに単語を覚えるようになった。M先生は仏文科ご出身で、ラテン語の素養もあったので、英語の授業中に、語源の蘊蓄を披露して下さることがしばしばあった。面白かったし、助かったことは何度もある。少しでも参考になれば幸いである。