語学、翻訳、海外生活

語学、翻訳、海外生活に関する記事が多いですけれども、そのほかの話題もあります。今日明日の仕事や生活に役立つかどうかは分かりませんが、「面白い」と思って下されば、書き手冥利に尽きます。

文は人なり

文は人なり」とは、「文章を見れば書き手の人柄が知れる」(広辞苑)ということだ。フランスの博物学者ビュフォンの言葉らしい。

フランスに滞在している間、息子の通っていた国際学校で、ある祝賀会があり、近隣の郡や市の教育長や、自治体の長が数人招かれて、祝辞を述べた。私のフランス語力は高が知れているが、そんな私でも理解できる平易な言葉で、ありきたりでなく、それぞれ違う視点から、学校生活の意義や、自治体が学校や生徒に期待することを、押しつけがましさはなく、説教臭さは微塵もなく、飽きさせないで、ユーモアでときどき笑いをとり、生徒や職員、父兄を励ます内容だった。原稿を見る人はいなかったし、直前のスピーチの内容を受ける祝辞もあったので、あらかじめ自分か誰かが準備した原稿をそのまま読んだのではなかったのは明らかだ。教養人、かくあるべし。

国際学校には、優秀で人柄も良いと評判の国語(フランス語)の先生がいて、運よく、その方が息子のクラスの国語の担任だった。話す言葉も、書く言葉も、平易で分かりやすく教養にあふれている。言葉の選択が的確で、人柄が表れている。発音も美しい。話し方も穏やかで優しい。まさに「文は人なり」だ。このような域に達するには、長年の鍛錬が必要なのだろう。

かく言う私は、フランスに居た頃、職場のオープンハウスでバスツアーの案内係を仰せつかったことがある。最初、英語で、という話であったが、直前になって「地元の人が多いから、やはりフランス語でお願いね」と。とんだ無茶振りだが、直前に猛勉強したこともあり、なんとかこなし、質問にも答えた。帰宅したあと、我が息子が「お父さん、お疲れ様。でも、つぎは原稿を用意したほうがいいかも」。息子よ、ありがとう。よくぞ言ってくれた。日暮れて途遠し。いや日が没するまでには、まだまだ時間がある。