語学、翻訳、海外生活

語学、翻訳、海外生活に関する記事が多いですけれども、そのほかの話題もあります。今日明日の仕事や生活に役立つかどうかは分かりませんが、「面白い」と思って下されば、書き手冥利に尽きます。

先方はプロ

東京にオリンピックを誘致できたのは、80%以上滝川クリステルさんの名スピーチのおかげ、と言う人がいる。まごうことなき名スピーチだった。そのなかで、彼女は「日本は治安が良い。財布を無くしても、ほとんど戻ってくる」ということに触れていた。たしかに日本は治安が良い。二十年ほど前、私の職場にヨーロッパから長期で来られていた研究者の奥様のなかに、よく忘れ物(落とし物)をする方がいらっしゃった。財布を5回日本で紛失したが、そのたびに財布が警察に届けられ、奥様のもとに戻ってきた。もちろん現金もカードもそのままで。滝川さんのスピーチに誇張はない。

しかし、海外の大都市では、そうはいかない。追いはぎ、泥棒などの被害にあった話は後を絶たない。私は、海外生活が長かったし、出張も多かった。被害にあわないように、自分なりに気を付けていた。それは、

夜間は一人で外出しない、とくに繁華街には。多額の現金は持ち歩かない。華美な服装はしない。住居やホテルは安全な場所で。

そういうふうに気を付けていたが、あるとき、アメリカの東海岸に出張した際、道に迷って、高速道路を降りたところが、運悪く、貧民街のど真ん中であった。建物のガラス窓は割れたまま。道端には、昼間なのに、若者達がたむろして、こちらをジロリと睨んでいる。危険を察する直感が自分にもあることを実感した。夢中で高速道路の入り口を探して退散したのは言うまでもない。

学生時代からの友人二人が南仏に遊びに来たので、一晩同行した。夕食の後、繁華街を歩いていたら、客引きに誘われて(この段階で危険!)、小さな飲み屋に入ったところ、友人のひとりが、なにか不穏な雰囲気を察したらしく「ここは、ヤバい。出よう」と言うのですぐさま退出。直感の鋭い友人がいて助かった。クワバラクワバラ。

というわけで、ちょっと怖い思いをしたことはあるけれど、犯罪の被害にあったことはない。「海外滞在が長いですが、被害にあったことはないのですか」と聞かれることがある。その際には、「運が良かったのかも知れませんが、先方はプロだから、相手を選ぶのでしょう。お金持ちじゃない人は分かるのでは。」と答えることにしている。