語学、翻訳、海外生活

語学、翻訳、海外生活に関する記事が多いですけれども、そのほかの話題もあります。今日明日の仕事や生活に役立つかどうかは分かりませんが、「面白い」と思って下されば、書き手冥利に尽きます。

東日本大震災

2011年3月11日、大地震が東北地方を襲った。そのころ私は南仏に長期出向していた。フランスでも、メディアは震災や津波、それから原発事故のことを連日大きく取り上げた。職場や自宅の近くのレストランで食事をしたり、スーパーで買い物をしたりしていると、見知らぬフランス人から声をかけられることが何度もあった。会話はつぎのような趣旨であった。

「あなたは、日本人ですか。」「こんどの大震災は大変でしたね。」「今回の大震災で、日本人がどれだけ素晴らしい民族であるかが、よく分かりました。あれだけの大きな被害を受けたあとでも、日本人は、力を合わせて、整然と黙々と復興に取り組んでいる。ほかの国だったら、暴動が起こっても不思議はないのに。私は感動しました。」

自分の国のことを褒められて、とても嬉しく、誇りに思ったが、同時に、遠い国の災害に心を痛めている、フランス人の優しさがよくわかった。

このように、国境を隔てて言葉や表現は違っても、考え感じることは似ていることが多い[1]。外国語を日本語に、日本語を外国語に翻訳して、外国の人たちと情報を共有し共感することによって、この世界は住みやすく楽しくなる。職業翻訳者として、日々外国語や日本語と格闘して、人と人をつなぎ、日本と世界をつなぐ橋のような役割を果たすのは重要で素敵な仕事だ。

[1] このことを最初に教えて下さったのは、『「?」「!」』でもお話しする大河千弘先生である。多様な国籍の部下を何百人も使っていた先生のお言葉には重みがある。