語学、翻訳、海外生活

語学、翻訳、海外生活に関する記事が多いですけれども、そのほかの話題もあります。今日明日の仕事や生活に役立つかどうかは分かりませんが、「面白い」と思って下されば、書き手冥利に尽きます。

パリの地下鉄

パリの地下鉄は、縦横に張り巡らされているし、車の渋滞に巻き込まれることもないので便利な一方、スリが多いのが厄介だ。 若いころ、長期派遣先のアメリカからパリに出張した時、次のような事件に遭遇した。 パリの地下鉄に乗っていると、ある駅でバタバタと数人の少女たちが駆け込んできた直後に、ドアが閉まった。 老夫婦が追いかけてきて、なにか大声で叫びながらドアを何度も叩くと、ドアが開いた。 老夫婦が、少女の一人を捕まえると、その少女が、持っていた財布にあった小銭を床にぶちまけた。 老夫婦は、フランス語で「悪い奴らメ」などと言いながら、財布を取り戻した。 少女たちは、一目散に逃げた。

 

 

その数日後、パリのドゴール空港の待合室で、その老夫婦に偶然出会った。 「あなたがたが地下鉄でスリから財布を取り返すのを見ていました。 大変でしたね」と話しかけると、お二人は、ビックリして、「見ていたの!? あの子たち、未成年だから悪さをしても罰が軽いのよね。 私たち、ロサンジェルスで、靴屋を数軒持っているの。 だから、お金は取られても全然痛くはないのよ。 でも、グリーンカードが無くなったら、とても面倒なことになるから、グリーンカードだけは取られたくなかったのよ。」うーん、世の中にはお金に困っていない人種もいるのだ、と感心した。 そのご婦人はミンクのコートをお召しで、指には大きい宝石をあしらった指輪がいくつも嵌めてあった。

 

後日友人にこの話をし、「お金に困っていないのならば、地下鉄ではなくタクシーを使えばいいのに」と思ったと言うと、「お金持ちのなかには、貧しかったころの習性が身についていて、タクシーは贅沢だから地下鉄に乗るなどして、倹約するひともいるらしい」と。高価なものを身につけているから、スリに狙われる、というお金持ちの悩みなど自分には縁のない話ではある。しかし念のため、外国で地下鉄に乗る時は用心したい。皆様もどうぞご用心を。