語学、翻訳、海外生活

語学、翻訳、海外生活に関する記事が多いですけれども、そのほかの話題もあります。今日明日の仕事や生活に役立つかどうかは分かりませんが、「面白い」と思って下されば、書き手冥利に尽きます。

ルルドの泉

ルルドは、フランスとスペインとの国境近くの小さな村であったが、カトリック最大の巡礼地となっている。1858年にベルナデットという少女が、洞窟で「白い貴婦人」を見たと発言した。この貴婦人は、少女にしか見えなかった。少女が貴婦人に名前をたずねたところ、貴婦人は、「私は『無原罪の御宿り』です」とルルドの方言で告げた。これは、教会用語で「聖母マリア」のこと。少女は家が貧しくて学校に通えず、教会用語を知るはずはないので、最初は懐疑的であった神父をはじめ周囲の人々も聖母の出現を信じるようになった。「聖母」が指さしたところに泉が湧いた。これまでこの泉で「説明不可能な治癒」が起こったのは2,500件とされる。しかしカトリック教会は奇跡と認定するために厳しい基準を課しているため、奇跡と公式に認定される症例は68件となっている。[1]

 

フランスに滞在中に、私の親友であるN君が末期ガンに侵されていると聞いた。私もN君もカトリック信者ではないし、N君は最先端の治療を受けているのだから、無駄なこととは思いながら、もしかしてルルドの水で奇跡が起こるのではないか、いや、おこって欲しい、と願って旅行の計画を立てた。しかしながら旅行の前に、N君は容態が急変して帰らぬ人となってしまった。

 

N君のためには遅くなってしまったけれども、ルルドのことは高校時代の恩師から聞いていたので、家族で出かけることにした。それは忘れられない体験になった。「ルルドの泉」の恩恵に浴しようと、数多くの重病患者が家族に伴われて列をなしていた。小瓶に泉の水を汲んで、カトリック信者の恩師や知人たちに送ったところ、とても喜ばれた。まことに信仰の力は大きい。信者にとってはルルドの水は特別な意味を持つのだ。

 

[1] 「ルルドの聖母」Wikipedia