「先生の説明、メッチャ」
アルバイトで、学習塾で講師をしている。(もっとも、現在は多忙につき休業中。)高校生に、物理や数学、英語を教えていた。あるとき、塾長から、英語の単位を落としそうな子がいるので、指導してもらえないか、という依頼があった。会ってみると、礼儀正しい、好青年。一流高校には合格しているので、英語の基礎はできている。そこで、教科書を詳しく説明した。授業の後、その生徒が、「先生の説明、メッチャ」と言うので、高校生の言葉遣いに慣れていない自分は、「先生の説明、滅茶苦茶」と言われるのかと思ったら、「分かりやすかったです」と続けてくれたので、胸をなでおろした。連日特訓を課した結果、なんとか及第点をもらえたという。
覚えないとならない量を考えたら、塾の授業時間は圧倒的に足りない。したがって、勉強法を聞き、基本、自習して、分からないところを塾で聞くようにしなさい、と生徒には繰り返し言い聞かせた。授業で一から十まで解説するほうが、多くの問題をこなせる。教えるほうは教えた気になるし、生徒や親も満足する。しかし、生徒が自分で問題を解けるようになるかと言うと、必ずしもそうではない。自分で解けるようになるには、自分で考えるくせをつけるのが一番だ。
一流の進学校に通う生徒が、物理を習いたいという。学校で出す課題の一割ぐらいしか解けない。なるべく解法を自分で考えるように仕向けて、ときどきヒントをあげ、軌道修正することにした。解けたときは、うんと褒めてあげた。授業の最後には、「よく頑張ったね」と声をかけた。副塾長先生「〇〇君、帰る時、いつもニコニコしています。」半年経つと、半分ぐらいの問題は生徒が自分で解けるようになった。入試が近づいたので、難関である志望校の過去問を一緒に解いた。生徒「入試問題でも、結構いけますね。」はじめは、自分のほうが先に解いて、生徒が解くのを見ながらときどき助言していたが、あとのほうでは、生徒の方が私より速くなった。「問題解くスピード、今日は僕より速かったね。」と生徒に言ったところ、生徒「先生、お年ですから。」これには参った。